離婚や死別でひとり親になると、子どもを一人で育てながら働くことになります。
病院に連れていくたびに「この3割負担も、積み重なると結構キツいな…」と感じることはないですか?
実はひとり親家庭を対象に、この医療費の自己負担を大幅に減らしてくれる制度が多くの自治体にあります。
それが「ひとり親家庭等医療費助成制度」です。子どもだけでなく、親自身の医療費も対象になるのが大きな特徴です。
- いくら減る?自己負担が1割〜無料に(自治体による)
- 誰が?ひとり親の親本人+子ども
- 所得制限は?あり(児童扶養手当に準じる)
- 手続きは?市区町村の窓口に申請→医療証を受け取る
- 国の制度?いいえ、自治体の独自制度
- 子どもの年齢は?原則18歳年度末まで(自治体差あり)
注意:これは国が全国一律でやっている制度ではありません。都道府県・市区町村がそれぞれ独自に実施する制度です。お住まいの自治体によって内容(助成額・所得制限・対象年齢)が異なります。
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そもそも、なんでこの制度があるの?
病院で診察を受けると、窓口で払うのは通常3割ですよね。残りの7割は健康保険が払ってくれています。
この「3割負担」、健康な大人なら年にそう何回もかかるわけじゃないので、そこまで気になりません。でも、子どもを育てながら一人で働いているひとり親家庭の場合、話が変わります。
- 子どもは病気になりやすく、医療機関にかかる頻度が高い
- 親も働きながら体調を崩してもなかなか休めない
- 収入が一人分しかないのに、医療費・養育費・家賃をすべて払わなければいけない
そういった経済的負担を少しでも和らげるために、多くの都道府県・市区町村がひとり親家庭の医療費を補助する制度を独自に作っています。これが「ひとり親家庭等医療費助成制度」です。
ひとり親家庭が医療費負担を感じやすい理由
つまり、「ひとり親は収入が一人分なのに、医療費や養育費の支出は普通の家庭と同じかむしろ多い」という実態があります。この制度はそのギャップを埋めるために作られた、自治体独自のサポートです。
誰が対象なの? 条件はあるの?
「ひとり親家庭」といっても、細かく条件が決まっています。まず大前提として、お住まいの市区町村に住民登録があり、健康保険に加入していることが必要です。
どういう状況が「ひとり親家庭」にあたるの?
よくあるケースをまとめると、次のとおりです。
- 父母が離婚した(事実婚の解消を含む自治体も多い)
- 父または母が死亡した
- 父または母が一定程度の障害の状態にある(重い障害)
- 父または母が1年以上の行方不明・遺棄の状態にある
- 父または母が1年以上拘禁されている
- 父または母から裁判所のDV保護命令を受けている
- 未婚で出産した(認知なし)
「離婚した」だけでなく、死別・行方不明・DV・未婚出産なども対象になります。「自分はひとり親だけど、この制度の対象になるの?」と迷った場合は、市区町村の窓口に確認してみてください。
対象になる人は誰?
制度の対象者は大きく2グループです。
- 親本人(ひとり親の母または父)
- 子ども(ひとり親が養育する18歳年度末までの児童)
「子どもだけでなく、親自身の医療費も助成される」のがこの制度の重要なポイントです。こども医療費助成制度(すべての子どもが対象)と異なり、ひとり親の親の医療費まで助成してくれるところがこの制度ならではです。
なお、障害がある子どもの場合は20歳未満まで対象を延長している自治体が多くあります。高校在学中は20歳まで対象になる自治体もあります。
所得制限はあるの?
あります。多くの自治体では児童扶養手当の所得制限に準じた基準を使っています。
2024年11月の児童扶養手当法の改正により、多くの自治体でこの制度の所得制限限度額も引き上げられました。扶養親族が0人の場合、申請者本人の所得上限がおおよそ192万円→208万円に緩和されたケースが多く見られます。
所得制限の確認:「収入」ではなく「所得(収入から給与所得控除や各種控除を引いた額)」で判定します。養育費を受け取っている場合は、その80%が所得に加算されます。詳しい基準はお住まいの市区町村に確認してください。
対象外になる人は?
- 生活保護を受けている方
- 施設等に措置により入所している方
- 事実上の婚姻関係(同棲・事実婚)にある方
- 所得が制限限度額以上の方
- 重度障害者医療費助成など他の公費医療を受けている方(一方を選ぶことが多い)
実際どのくらい安くなるの?
残念ながら「全国一律でこの金額」という答えはありません。自治体ごとに助成額・自己負担額が異なります。ただし、代表的なパターンをいくつか紹介します。
完全無料(窓口自己負担ゼロ)タイプ
医療機関の窓口で医療証を提示すれば、保険診療分の自己負担が0円になります。千葉市・市川市などはこのタイプです。
1割負担タイプ
通常の3割負担から1割負担に下がるパターンです。東京都(マル親)・埼玉県などがこの方式をとっています。さらに1か月の自己負担に上限が設けられているため、多数回通院しても一定以上の負担にはなりません。
1日500円などの定額負担タイプ
1医療機関ごとに1日最大500円(月2日限度)など、定額の自己負担を設定しているところもあります(大阪市、大阪府内の市町村など)。
入院時の食事代は?
多くの自治体では、入院時の食事療養費(標準負担額)は助成対象外です。ただし、千葉市など一部の自治体では食事代も含めて助成しているところがあります。
たとえば東京都(1割負担)の場合、ふつうは3割払うところが1割で済みます。月の通院費が1万円かかる場合、3割負担なら3,000円のところが1,000円になるイメージです。しかも月の上限があるので、医療費が高額になっても一定以上は払わずに済みます。
助成されないものは?
- 健康診断・予防接種
- 差額ベッド代(個室料金)
- 薬の容器代
- 文書料
- ジェネリック医薬品がある先発品の選定療養費(2024年10月以降)
- 学校管理下の怪我でスポーツ振興センターの共済給付を受ける場合
助成の種類は自治体によって異なる(代表例)
全国どこでもある制度なの?
これは正確に答えることが重要なポイントなので、はっきり書きます。
ひとり親家庭等医療費助成制度は、国の法律に根拠を持たない自治体独自の事業です。国が全国一律で実施しているわけではありません。
「全員どこかでやってる」とは言い切れない
こども家庭庁が毎年実施する調査では「全都道府県および全市区町村がこどもに係る医療費の助成を実施している」という数字が出ています。ただし、この調査は「こども医療費助成」(すべての子どもが対象)の調査であり、ひとり親家庭等医療費助成(親も含む)の全国調査ではありません。
ひとり親家庭の親本人の医療費まで助成する「ひとり親家庭等医療費助成制度」については、47都道府県すべての実施・非実施を網羅した公式の一覧表は現時点で公表されていません。
「全国どこでもある制度です」とは書けません。ネット記事の中には「全国の自治体で実施」と書いているものもありますが、これは正確ではない可能性があります。お住まいの自治体に直接確認することが最も確実です。
実施が確認できる主な都道府県・自治体
各都道府県・主要市区町村の公式サイトで実施が確認できた例(2025年〜2026年現在):
- 北海道(札幌市など)
- 東京都(「マル親」として全区市町村で実施。法別番号81)
- 神奈川県(横浜市、横浜市など)
- 埼玉県(さいたま市など)
- 千葉県(千葉市、市川市など)
- 大阪府(大阪市など)
- 兵庫県(神戸市など)
- 岡山県(岡山市)
- 愛媛県(松山市)
- 福井県(福井市)
- 福岡県(福岡市など)
ただし、これはあくまで公式サイトで確認できた一例であり、上記に含まれていない都道府県でも実施している場合があります。
名称がバラバラなのも要注意
都道府県や市区町村によって制度の名称が異なります。
- 「ひとり親家庭等医療費助成制度」(最も一般的)
- 「マル親」(東京都)
- 「ひとり親家庭医療費助成」(大阪市)
- 「母子家庭等医療費助成」(古い名称が残っている自治体も)
- 「福祉医療証」(神奈川県・横浜市)
探すときは「[お住まいの市区町村名] ひとり親 医療費助成」でGoogle検索するのが一番確実です。自治体の公式ページがすぐ出てきます。見つからない場合は市区町村の窓口(子育て支援課・保険年金課など)に直接電話して確認しましょう。
都道府県と市区町村の役割分担は?
多くの場合、都道府県が補助金を出し、実際の窓口業務・申請受付・医療証の交付は市区町村が行います。千葉県の公式ページには「この助成の実施主体は市町村で、市町村ごとに条例等で助成方法等を定めています。県は市町村に補助金を交付し支援しています」と明記されています。
そのため、同じ都道府県内でも市区町村によって自己負担額や対象年齢が少し異なることもあります。転居の際は転入先の自治体で改めて確認・申請が必要です。
申請ってどうやるの?
基本的な流れは全国ほぼ共通です。ただし、必要書類や窓口の名称は自治体によって異なります。
申請に必要な書類は?
自治体によって異なりますが、よく求められるものをまとめます。
- 申請書(窓口でもらえる)
- 戸籍謄本(ひとり親であることを証明するもの)
- 健康保険の情報が確認できるもの(マイナ保険証・資格確認書・資格情報のお知らせなど)
- 個人番号(マイナンバー)確認書類
- 本人確認書類(免許証・パスポートなど)
- 児童扶養手当証書(すでに受給中の場合は戸籍・所得証明書が省略できることが多い)
- 養育費に関する申告書(離婚・認知の場合)
時短ポイント:すでに児童扶養手当を受給中の場合、所得状況が確認済みなので戸籍謄本や所得証明書の提出を省略できる自治体が多いです。申請時に確認してみてください。
県外の病院に行ったときは?
多くの制度は、住んでいる都道府県内の医療機関でのみ医療証が使えます。県外の病院を受診した場合は、いったん窓口で全額支払い、あとから「償還払い」で申請することになります。領収書をなくさないように注意しましょう。
あわせて読みたい サムネイル 児童扶養手当っていくらもらえるの?所得制限は? ひとり親家庭の代表的な支援制度。医療費助成と合わせて申請すると手続きがスムーズになることも。「こども医療費助成」とはどう違うの?
名前が似ていて混乱しやすいので整理します。
ひとり親家庭まわりの医療費助成の比較
最大のポイントは「ひとり親家庭等医療費助成は、親自身の医療費も助成される」点です。こども医療費助成は子どもの医療費しかカバーしません。ひとり親の親が病院にかかる費用も減らせるのが、この制度の強みです。
児童扶養手当との関係は?
児童扶養手当とひとり親家庭等医療費助成は別々の制度ですが、所得制限の基準がリンクしています。児童扶養手当を受給している人は、ほぼこちらの医療費助成も対象になります(例外あり)。逆に、所得が高くて児童扶養手当がもらえない人は、こちらも対象外になりやすいです。
あわせて読みたい サムネイル 児童扶養手当っていくらもらえるの?所得制限は? ひとり親家庭の柱となる支援制度。医療費助成と合わせて確認を。みんなが気になる Q&A
A.はい、できます。ひとり親になった日から申請可能です。市区町村によっては、ひとり親になった月内に申請すればその月から遡って適用される場合があります。離婚が成立したら、なるべく早く窓口に行くことをおすすめします。
A.転居した場合、前の自治体の医療証は使えなくなります。転入先の市区町村で新たに申請が必要です。転入した月内に申請すれば、その月から適用されることが多いので、引越し後はすぐに手続きしましょう。
A.所得が増えて所得制限の限度額を超えると、翌年度以降は受給できなくなります(所得は毎年審査)。ただし、パートで収入が増えても、給与所得控除や各種控除があるため、すぐに対象外になるとは限りません。毎年の更新のタイミングで審査が行われます。
A.原則として、子どもが18歳になった年度末(3月31日)に終了します。ただし、高校在学中は20歳まで延長できる自治体が多く、障害がある場合も延長されることがあります。詳しくはお住まいの自治体に確認してください。
A.はい。多くの自治体では、受け取った養育費の80%を所得に加算して所得制限の判定を行います。たとえば月5万円の養育費(年60万円)を受け取っている場合、48万円分が所得に上乗せされるイメージです。これが所得制限の計算に影響することがあります。
A.はい、保険診療の範囲内であれば歯科でも使えます。ただし保険適用外の白い歯(セラミックなど)や矯正歯科は対象外です。
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もっと詳しく知りたいとき(公式の情報)
この記事はわかりやすさを優先したため、細かい要件を省略している部分があります。正確な情報は、お住まいの市区町村の公式サイトまたは窓口で確認してください。
- 東京都福祉局「ひとり親家庭等医療費助成制度(マル親)」
- 埼玉県「ひとり親家庭等医療費助成制度」
- 千葉県「ひとり親家庭等医療費等助成事業」
- 大阪市「ひとり親家庭等の医療費助成」
- 札幌市「ひとり親家庭等医療費助成」
上記に含まれない都道府県・市区町村については、「[お住まいの市区町村名] ひとり親 医療費助成」で検索するか、市区町村の代表番号にお問い合わせください。
この記事は一般的なケースをわかりやすくまとめたものです。制度の内容・所得制限額・自己負担額は自治体によって異なり、変更されることもあります。必ずお住まいの自治体の最新情報を確認のうえ申請してください。